カンタル アントル ドゥ
フランスのオーヴェルニュ地方、カンタル山塊で造られる大型のハードタイプチーズ(非加熱圧搾)( A.O.P. )。
生産量が多くフランスでとてもポピュラーなチーズで、
2000 年も前から造られており、夏のあいだはヴュロン( Buron )という石造りの小屋、秋になると谷間に降りて造られていた歴史があります。
力強さと素朴なナッツ香を併せ持ち、熟成が長いほど風味が強くなります。
熟成度により、
- 「ジェンヌ」 30 ~ 60 日熟成
- 「アントル・ドゥ」 90 ~ 210 日熟成
- 「ヴュー」 240 日以上熟成
と呼び分けます。
今回いただいたのは、熟成期間 90 日以上の「アントル・ドゥ」。
分厚くボコボコとした表皮に、目の詰んだ淡い黄色の中身は、少しポロポロと崩れるような食感です(なめらかな舌ざわりではない)。
酸味を帯びたさわやかな香りと、酸味と塩味を強く感じるストレートな味わいで、
途中でナッツのようなコクを感じます。
力強い味ですが、後味はすっと消えるのでさっぱりと食べられます。
突き刺すような、ぱっと来る旨みがあり、味が強いので、野菜たっぷりのサンドイッチやサラダのトッピングに使えば一気に味が締まって華やかになること間違いなしのチーズです(^^)
トム ド サヴォワ
フランスのサヴォワ地方で造られている、
山のチーズらしい素朴さを持つハードタイプチーズ(非加熱圧搾)。
周りを覆う分厚いグレーのカビがサヴォワの「トム」の特徴で、熟成と共に、自然な黄、赤、茶色などのカビが混在するようになります。
(「トム」とはポーション(ひとかたまり)の意味)
牧草のような独特の香りを持ち、素朴さの中にナッツのような香りが混ざる、さっぱりとした印象ながら深い味わいのチーズです。
今回いただいたのは、「パカール社」熟成の農家製のもの。
分厚く樹皮のような表皮に、淡い黄色でぽってりとした印象の中身には、所々に小さな穴があいています。
草刈りをしているときのような青臭い香りで、
ナッティーなコクが強くまったりとしており、キャラメルのような苦みも感じられます。
「素朴」とうたわれているだけあり、ややもすると野暮ったい印象を受けるチーズですが、あっさりとしたプロセスチーズを食べ慣れている日本人には馴染みやすい味だと思いました。
エメンタール
「トムとジェリー」でおなじみの、中に丸い穴がポコポコと開いている姿が可愛らしいスイスのハードタイプチーズ。
「チーズの王様」と呼ばれることもある、エメンタール地方で造られている世界有数の大型チーズで、1 個造るために約 100 Lの牛乳が必要です。
乳牛の飼料は牧草と干し草が中心(遺伝子組み換えでない飼料穀物も使えます)。
集乳範囲は 30 ㎞以内、搾乳後 24 時間以内に製造を開始するという決まりがあります。
特徴の丸い穴は「チーズアイ」と呼ばれ、これは製造工程でスターターとして加えるプロビオン菌が高温熟成中に出す炭酸ガスが、エメンタール特有の緻密で弾力性のある生地の中に閉じ込められてできたものとされています。
かすかに甘みが残る淡白な風味で用途が広く、特にチーズフォンデュには欠かすことのできないチーズです。
さて、実際に食べた私の率直な感想としては
「あまり美味しいチーズではないな」でした (笑) 。
ヨーグルトのような酸味を帯びた香りで、弾力がありややむっちりとした生地。
アーモンドのようなナッティーな感じが強く、独特の渋みのある素朴で野性的な味。
そのまま食べるには少しパッとしない印象でした。
それが、チーズトーストにしてみたところ印象ががらりと変わりました!
熱を加えることで旨味が格段にアップし、特有のシコシコとした弾力を残した、よく伸びるチーズに変わったのです!!
この、「伸びる」というのは、他のチーズによくみられる「トロリ」としたとろけるような感じではなく、しっかりとした食感が残っており、ナッティーな感じと相まってとても重厚感があります。
風味が穏やかなので、他のチーズといくつか合わせたチーズトーストにしたらさらに美味しいのではないかと思います。
そのまま食べるよりも、加工したり、なにかと合わせることでその美味しさを発揮するチーズです。
カマンベール パストリゼ
殺菌乳を用いているため、香りも穏やかでマイルドで優しい味わいの、
食べやすい白カビタイプチーズ。
カマンベール・パストリゼ は、フランスのノルマンディー圏で造られています。
ノルマンディーのカマンベールといえば、
A.O.C. の「カマンベール・ド・ノルマンディ」が真っ先に出てくるかもしれませんが、
こちらは無殺菌乳を使用しているため複雑な味わいとなり、同じカマンベールといえど全く違うものとなります。
私たちが普段スーパーなどで気軽に購入しているカマンベールは殺菌乳を使用しているので、こちらのほうが馴染みのある味です(^^)
今回購入したものは賞味期限当日のものでしたが、しっかりとした食感と弾力があり、
とても加工性に優れていると感じました。
とにかく優しい、クリーミィでありながらあっさりとしたチーズ。
お値段も比較的優しいので、バゲットなどにたっぷりと挟んでサンドイッチにしたら最高だと思います!!!
ブリア サヴァラン アフィネ
さわやかな酸味と滑らかな口どけから高名な美食家の名を冠し、世界的にも人気の高い、Wクリーム製法(牛乳と生クリーム)の白カビチーズ。
ブリア サヴァランは、I.G.P. 認可のチーズで、ブルゴーニュ地方で造られています。
外皮近くはシャンピニョンの香りと言われ、
クリームを添加した中の生地は非常に口どけが滑らかで、熟成の若い者はまるでチーズケーキのようと表現されます。
そして、熟成が進むにつれ、ねっとりと濃厚になっていきます。
ドライフルーツやナッツ入りのパン、魚介類の燻製、ローストチキンなどとよく合うようです。
今回いただいたのは「ブリア サヴァラン」を 4 週刊熟成させた「ブリア サヴァラン アフィネ」です(「アフィネ」は「熟成させた」という意味 )。
しっかりと熟成された淡い黄色の中身は、外皮を押すととろけ出しそうなほど柔らかくトロトロで、スプーンですくわないと食べられないほどです!
香りも生クリームのようにコクがあり、食べた感じも生クリームのまったりとした奥深いコクがある。
あまり良い表現ではないかもしれないですが、まるで良質のマヨネーズをたべているよう。
対して外皮は、ピリリと刺激的な辛さで、中身と一緒に食べると、マイルドさの中に発酵食品特有の刺激と旨みが味わえます。
さすがに美食家の名を冠しているだけあり、デザートのような、とてつもなく濃厚なチーズでした。
白カビチーズでどれにしようか悩んだら、ぜひ選んでほしい逸品です!
ガレ ド ラ ロワール
ロワール川の下流、アンジュ―地方で造られている、
Wクリーム(牛乳と生クリームを使用)のウォッシュタイプチーズ。
「ガレ」は小石の意味で、ロワール河岸の小石をイメージした形をしています。
通常、ウォッシュタイプのチーズは、酒や塩水で洗うため独特の香りになりますが、ガレ ド ラ ロワール は「水」だけで洗うため香りが穏やかです。
また、ふわっと広がるミルクの甘味や、やわらかな表皮と乳脂肪分が高くトロリとした生地なので、とても食べやすく人気のあるチーズです。
さて、実際にいただいてみました。
カマンベールのような見た目ですが、塩素系漂白剤のような、かすかに薬品を思わせる香りがします。
しっかり熟成されたものでしたので、押すと中身が出てくるほど柔らかくトロトロでクリーミィ!
香りに反して味はとても穏やかで、生クリームのマイルドな味わいに、牧草を思わせる青い苦みが追いかけてきます。
外皮もクセがなく、シコシコとした食感で美味しく、無殺菌乳を使用した白カビタイプのチーズのような、ピリピリとした刺激も全く感じませんでした。
私としては、カマンベールやブリーのような白カビチーズよりも食べやすいチーズだと思いましたが、やはり香りに若干のクセがあるので、そこで好みが分かれるかもしれません。
それでも、ウォッシュタイプのチーズの中ではとても穏やかな香りなので、「ウォッシュタイプのチーズに抵抗があるかもしれない…。」という方は、まずは試しに ガレ ド ラ ロワール を食べてみるのがおすすめです(^^)
オッソ― イラティ
ベアルン地方のオッソーの谷と、バスク地方のイラティの森にその名の由来を持つ羊乳を使用したハードチーズ(非加熱圧搾タイプ)。
ピレネー山脈西側部分では羊乳を用いたチーズ造りが少なくとも中世から行われており、現在のオッソー・イラティに近いチーズもこの時代に造られていたようです。
使用する羊乳は、バスコ・ベアルネーズ種、マネシュ・テット・ノワール種、マネシュ・テット・ルース種に限定されており、9 月~10 月にかけての搾乳も禁止されています。
また、夏季に山で放牧した羊の無殺菌乳を用いて山のチーズ小屋で造られたものは「エスティーヴ Estive」と表記できます。
オッソー イラティは、羊乳の濃厚な旨みとバターのようなコク、蜂蜜を思わせる甘みを持ち、特に、熟成が進んで白いアミノ酸結晶がみられるものは絶品です。
そのままでも美味しいのですが、ダークチェリーや蜂蜜をつけていただくのがのが伝統的な食べ方とされています。
これだけ見ていると、くせがなくとても食べやすそうですが(実際、食べやすいと紹介されています)、実際に食べてみた私の印象は大きく違っていました。
まず驚いたのが、鰹節を思わせるような強烈な香り。
そして、口に入れた瞬間に旨みがぶわっと広がる華やかな味わい。
やはりどこか煮干しのような、魚を思わせる熟成された旨みを感じました。
私としては、香りにややくせがあり、表面にべたつきもあるため、好みの分かれるチーズだと感じました。
しかし、それ以上に、強烈な旨みのある美味しいチーズであることも確かです。
伝統にのっとって蜂蜜を垂らして食べたら、ほくほくとした食感も相まって、それはもう絶品でした!!
やはり、調べるだけではなく、食べてみないことにはわからないものだと気づかされたチーズでした。