プーリ二ィ サン ピエール
フランスのロワール地方、アンドルにある村の名前に由来するシェーブルタイプチーズ。
すらりと背の高いピラミッド型から「エッフェル塔」の愛称を持ち、
同じような形をしたシェーブルチーズの「ヴァランセ」の原型になったともいわれています。
シェーブルチーズの中では 2 番目に AOC を取得し、ここ 10 年程で生産量は 2 倍にも増えているようです。
柑橘系のフルーツを思わせる、やや強めの爽やかな酸味がありますが、
クリーミィでシェーブル特有の香りも軽く食べやすいチーズです。
熟成につれ外皮はごつごつと粗くなりますが、均一できめ細かな生地は、凝縮された旨みとしなやかさを増していきます。
熟成によって 2 つの種類があり、
1 つは「ジオトリカム」に覆われた白いチーズ。
もう 1 つは「ペニシリウム・アルバム」に覆われた青いチーズです。
さて、今回いただいたものは「ジオトリカム」で熟成された白いチーズです。
穏やかにシェーブル特有の香りのする生地は、白くやわらかでクリームチーズのようで、黄色の薄めの表皮に包まれています。
口に含むとふわっとムースのような軽い口当たりで、
ミルクの優しい味わいの中に、牧草を思わせる独特の苦みと梅干しのような酸味が感じられ、後を引きます。
独特な形と、シェーブルらしさが前面に出た爽やかな味わいで、
好みは別れそうですが、記憶に残ること間違いなしのチーズです!!
ピコドン
フランスのローヌ・アルプ地域圏、ローヌ川を挟んで向かい合うドロームとアルディッシュで造られている、小さな円形のシェーブルタイプチーズ。
ピコドンの名前の由来は、ロマンス語の 1 つであるオック語で「ピカン(ピリッとして)」と「ドゥ(甘い)」が訛ったとされています。
その名の通り、熟成 2 ~ 4 週間の若いものは辛さは感じられないが、
2 ~ 3 ヵ月熟成したものは味が引き締まりピリッとした辛味が出ます。
ドロームのデュールフィでは表面のカビを水で洗い熟成させて食べる、
伝統的な「ピコドン・アフィネ・デュールフィ」があり、地元で人気のようです。
2017 年には EU で新しい仕様書が承認され、無殺菌牛乳の使用などが義務付けられるようになりました。
さて、実際にいただいてみました。
少し厚みのある黄色の表皮に、もろくやわらかな中身は、黄色味がかったオフホワイトで、ややぼそぼそとした食感です。
シェーブル特有の香りが強く、
口に含むとミルクの甘味たっぷりで、梅干しのような強めの酸味を感じます。
最後のほうに苦みも感じられるため、ぐっとシャープな印象になります。
名前の由来にもなっている、ピリッとした辛味を私は感じられませんでしたが、
いかにもシェーブルチーズ!といった感じの印象を受けました。
熟成度合によって印象が変わると思うので、機会があればまた食べてみたいですね(^^)
バノン
栗の木の葉に包まれた姿が特徴的な、
フランス、プロヴァンス地方のバノン村のシェーブルタイプチーズ。
その歴史は古く、ローマ時代から造られていたという記述があり、
1270 年にマルシェで売られていた記録が残っています。
特徴となっている栗の木の枯葉は酢水で殺菌しており、
これでチーズを包み、ラフィアというヤシの繊維で結び、ひとつずつ手作業で包装しています。
ハーブを食べて育ったローヴ種の山羊乳も使われており、
塩気が程よく利いているため、シェーブル特有のクセは少なく感じられます。
スモークをくぐらせたような軽い香りが印象的で、
よく熟成されたものは常温で数分おくと中が溶け出し、非常にクリーミィでミルクのまろやかさと甘さを感じます。
さて、実際にいただいてみました。
やや厚みのあるアイボリーの表皮に包まれた中身は、
透明感があり、トロトロで流れ出すほどクリーミィ。
栗の香りがふわっと広がり、旨みが強く、ミルク感たっぷりでとてもまろやか。
クセがなく、ミルクの優しい甘さを感じられます。
野性的な外見(包装)でクセがありそうに見えますが、
栗の香りやハーブを食べて育った山羊乳のおかげか、とてもミルキーで食べやすいシェーブルチーズなので、食べなれていない方にもおすすめです!
ロヴ ド プロヴァンス
南フランスの高原でローズマリーやタイムなどをたっぷり食べて育った、
ローヴ種という山羊のミルクを使ったシェーブルタイプチーズ。
お団子のような丸いフォルムが特徴的で、
口どけよくさわやかな酸味とハーブの香りが広がります。
ローヴ種は今では希少となっており、そのため、
ほのかにハーブの香りのするミルクも希少価値となっています。
さて、今回いただいたのは農家製(fermier)のもの。
真っ白の生地は柔らかくクリームチーズのよう。
シェーブル特有の香りは弱く、ハーブ香りがとてもさわやかです。
なめらかでふんわりとした口当たりで、
ふわっと優しいミルクの甘さに包まれた、軽い酸味とハーブの香りが口いっぱいに広がります。
ハーブの香りが余韻を引くので、とにかく驚くほどさわやかなチーズ。
チーズプレートの中にこれがあったら嬉しいなと思いました!
繊細な味なので、ぜひこのままいただいて欲しいチーズです!
シャロレ
フランス、ブルゴーニュ地方で、厳しい既定のもとで造られるシェーブルタイプチーズ。
シャロレ製造に使われる山羊の種類は、茶色のアルピーヌ種か白のサーネン種。
10 頭につき 1 ヘクタールの土地、飼葉は AOC ゾーン内で最低 75 %生産されたものを使用、年間 150 日以上放牧など、製造や規格の他に厳しい決まりがあります。
時間をかけてゆっくりと型入れするため、中身は締まって濃厚。
ほどよい酸味とヘーゼルナッツやアーモンドを思わせるコクのある風味を持ち、
熟成につれ周りに白や緑のカビをまといながらコクを増していきます。
さて、今回いただいたのは農家製(fermier)製のもの。
黄土色で少し厚めの表皮に、オフホワイトの中身はしっとりとクリームチーズのよう。
シェーブル特有の香りの中にナッツ香があり、ややねっとりとしたとした口当たりです。
口に含むとアーモンドのようなコクが、がっと押し寄せ、そこに軽い酸味と苦味、最後にミルクの甘味が口に残ります。
酸味が聞いたものが多いシェーブルチーズの中ではかなり濃厚に感じられました。
こってりとしたパンチのきいたシェーブルチーズが食べたいときにおすすめです(^^)
ペルシエ ド シェーブル
パリで毎年行われる農業祭で金賞を受賞した、
青カビタイプのシェーブルチーズ。
「ペルシエ」とは「パセリ」の意味があり、白い生地にパセリ状に広がる鮮やかな青カビを指して名づけられました。
(古くはフランス、サヴォワ地方の山羊乳の青カビチーズをペルシエと呼んでいたようです。)
アンモニア臭を引き出すペニシリウム(カビ)を抑え、
クリーミィさを引き出すジオトリカム・カンディダム(酵母)を生かすことで、
シェーブルと青カビ特有のクセを抑えたとても優しい味になっています。
口に含むと山羊乳の香りが鼻腔に抜けていき、
しっとりとなめらかな生地が舌にとけ、香ばしいコクがふんわりと広がります。
さて、実際にいただいてみました。
炭末がまぶされた表皮と対照的な白い生地は、
しっとりとした質感で光沢があり、青カビが点在しています。
野性味あふれるミルクの中に香ばしさを感じる香りで、
弾力がありながらも、かなりやわらかな触感です。
口に含むとすぐに消えてなくなってしまい、舌触りが非常によくきめ細やか。
形を保てるぎりぎりの硬さ、という印象です。
チーズ自体はとても穏やかな風味でミルキー。
そこに青カビの刺激が追いかけてくるのですが、こちらも強すぎず穏やか。
後味に少し酸味を感じるので、全体の印象としてはさっぱりしています。
山羊乳の青カビチーズという、見た目からしてもクセが強そうでとっつきにくいチーズですが、いい意味で期待を裏切る穏やかでいいとこどりなチーズなので、
シェーブル、青カビが好きな人はもちろん、
苦手な人にこそ食べてみてほしいチーズです!
エーデル ピルツ ケーゼ
ドイツで 40 年以上も親しまれてきた青カビタイプチーズ。
コストを抑えることに成功し、ヨーロッパ中で人気のブランド「Paladin」が製造しており、とってもリーズナブルな価格になっております。
青カビチーズには珍しく目の詰んだ生地は、バターのような濃厚さ。
クリーミィに下に溶け、しっかりとした塩味がありますが、
生地のコクと相まってまろやかに感じられます。
さて、実際にいただいてみました。
こってりとした旨みを連想させる、濃厚で特有の生臭い香りのする生地は、
淡いクリーム色で、青カビが線上に入っています。
青カビチーズにしては硬さがあり、カット時にあまりボロボロと崩れません。
食べた感じもしっかりとした食感で、ねっとりと口の中にまとわりつきます。
青カビの辛味はマイルドで、ねっとりとした旨みがあります。
カラスミのような旨みも感じられ、切れの良い味で、後味にかすかに苦みを感じます。
青カビチーズに苦手意識がありましたが、チーズ自体が優しい味で、特有の刺激も穏やかなのでとても食べやすかったです。
お値段もびっくりするくらいリーズナブルなので、青カビチーズ入門に最適だと思います(^^)